As You Wish

17/34
前へ
/34ページ
次へ
「友花ちゃん、よかったの?」 冷蔵庫に買い物を片付けつつ、ねーさんが言った。 オレの手元は包丁とまな板。現在たこ焼きに入れる刻みねぎを大量生産中。 因みに粉の方は玉子と水とともに巨大なボールに入っている。美弥子さんがせっせとかき混ぜ中。 「はい?」 「友花ちゃんのご飯、大丈夫だった?」 ああ。 こういうとこ、ねーさんはすげーなって思う。 時々――正直かなり――強引なトコもある人だけど、割とちゃんとまわりのことも見てる。 ウチの家庭の事情を知ってるからってこともあるんだろうけど、友花のことまで心配してくれるって言うのは、なんていうか……ちょっと、ホッとする。 「連絡はしてるんで、何とかしてますよ」 「よく考えたら、ウチじゃなくてハルタくんちでもよかったかなぁって思ってさぁ」 片付いてないし後片付けもなくていいし友花ちゃんも心配だし、なんて、ねーさんがどこまで本気なのかわからない理由を並べ立てる。 「や、ねーさんちのほうでよかったです」 「即答ね。何でよ?」 「妹があれで人見知るんで。あとあれっすよ、ねーさんちの方が台所、使いやすいんですよね」 ねーさんは一人で2LDKのマンション暮らしだ。 だから、正確には台所って言うよりキッチンっていったほうが似合ってる。 アイランド式でシンクのところからリビングまで見渡せる。 割と広い部屋。 「そうなの?」 「ウチのはシンクが低いんすよ。台所独立した部屋になってるし。こっちのほうが作りながら話しやすいんで」 「ああ、お母さまに合わせてると、確かにシンクは低いかもねぇ。でも、あたし、ハルタくんちのお台所、好きなんだけどなぁ」 「ぼろいし使いにくいっすよ?」 「ん~、なんていうか、娘の立場でね。懐かしい感満載で好きなのよ」 ハルタくんの家って、昭和の家じゃない。 少し目を細めて本気で懐かしそうにねーさんが言った。 『家族縁っていうか、運、ない人なんだよね』って言ってた、課長の言葉を思い出す。 そうだ、この人、天涯孤独でバツイチなんだっけ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加