As You Wish

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彼女との始まりはよくわからない。 今年の新歓コンパで、隣の席になった。 正確に何人いるのかよくわからない、写真部の新歓コンパは、一応、上座に4回生以上と新入生の席が用意されてて、俺は4回生で、彼女は新入部員だったから。 不慣れな様子で給仕をしようとする彼女に 「そのうち慣れるって。今日は君も主役だから、座っときな」 そういってフォローしてたのは、何となく覚えてる。 やりすぎると2・3回生が悲しそうな顔をするから、まあほどほどに。 その辺、上級生も楽じゃねーのよ。 「ぅいーっす、おじゃましま~」 いい加減座も乱れようかって時に、こいちゃん――小池一成、という。新入生だけど実年齢は俺よりイッコ上っていう面白い経歴の人――が、顔を出した。 「あれ、こいちゃん、どしたん?」 「部長さんが呼んでくれた。入部してないから遠慮しようと思ってたんだけど、直に電話来ちゃって」 「あー、ごめん、あいつ酒はいると寂しん坊になるらしくてさ」 「うん、そんな感じ。面白い電話で楽しかったよ。おかげでふぅちゃんに追い出された」 ものすごくなれた感じで、座の中に加わって、腰を落ち着ける。 後輩が当たり前のようにビールの入ったコップを差し出す。 そんでまた、会釈して受け取って呑みながら話してって。 なんていうか、ものすごくこのぐだぐだした呑み会に馴染んでんですけど! 「追い出されたぁ?」 「そ。せっかくの学生生活なんだから、ちゃんと学生と交わってこいって」 「あー、言いそうあの人。真面目だもんな」 出された名前を脳内変換。 本名、椎嵩史さん。 俺のバイト先でもある大学内の図書館の職員さん。 わりかし綺麗な作りの仏頂面。 不機嫌そうに見えるのに、面倒見のいい人。 こいちゃんの幼馴染だとかで「面倒見てやって」と、入学式からそう経っていない頃にこいちゃんを紹介された。 俺たちにはそうでもないけど、こいちゃんと一緒の時には、その外見からは想像できないほどに雑な人。 「伝えとく」 笑いながらそう言ったこいちゃんに 「鉄拳制裁怖いから、止めて」 と返した。 ホントにあの人、手がでるんだもんな。 「ハルタさんにはしないでしょ」 「最近、括りがこいちゃんと一緒だから、あぶねー気がする」 そう言ったら、少し考えてからこいちゃんは笑った。 「ないよ。ふぅちゃん、すっげー外面いいから」
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