As You Wish

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「椎くんは、あれだもんねえ、つくしてもらってる方だもんね」 「あれは、ヤツが勝手にやってるんです」 「つくしてもらってる方ならわかるじゃない?してもらって、どう?嬉しい?キモい?」 「あー……」 ほらほら、と、美弥子さんにつつかれて、椎さんが困った顔をする。 そしてしばらく考えた後、言いたくなさそうに口を開いた。 「自分はできないし、しないんで、助かりますよ。悔しいけど」 「悔しいの?」 「自分には全くないスキル持って目の前にいられると、悔しいじゃないですか」 「ええ?何で?嬉しくないの?」 悔しい? 意外な感想に驚いた。 椎さん、こいちゃんに悔しいとか思ってたんだ。 『キモい』とか『嬉しい』じゃない感想が出てくると思ってなかったから、ちょっと新鮮。 何で何でと椎さんに詰め寄る美弥子さんを眺めつつ、ねーさんが肩をすくめてみせた。 「ま、つまりはこういうことよね」 「何がデスカ?」 「表現も受け取り方も、その人それぞれ」 ……ナルホド。 飲んで食って喋って笑って。 落ち込んでたのもうやむやになって。 そんで、ちょっと声がれとかしてみたりして、その夜はお開きになった。
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