As You Wish

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目を開けたら、自分の部屋。 ああ、やっぱ夢だったか。 そう思うのに、妙にリアルな感覚。 不思議な感じ。 しばらくぼんやりしていて、気がついた。 音。 階下から台所仕事している音がする。 それから誰かの話し声と。 今では殆んど聞くことのなくなった音。 昔、よく聴いていた音。 いつの間にか額におかれていた濡れタオルをもって、上着を羽織ると階下に向かう。 台所にいたのはがたいのいい男。 「…なんで、こいちゃんよ?」 当たり前のように台所に立って、家事をしながら友花と話している友人を見て、がっくりと力が抜けた。 「るんちゃん、せっかく来てくれたのに、冷たすぎ」 「いやだって、意外すぎる人選だし」 「見舞いを寄越すって、言ってたでしょ?」 まあまあと、椅子を勧めながらこいちゃんは笑う。 熱はどう? 薬飲む? 腹減ってない? ちょこちょこと確認しながら、手は動いていて、椎さんからの見舞いだという茶菓子がテーブルに乗る。 そういえば今朝、バイト欠勤の連絡入れたとき。 『お大事に。後で見舞いを寄越すわ』 とか何とか椎さんが言ってた気がする、けど。 「来るの、本人かと思うじゃん」 「アノヒトが来る訳ないでしょう。だいだい、家事無能者だよ。邪魔になるだけ」 「きっついねぇ」 「本人がそういってるから、いいんだよ」
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