As You Wish

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事実だし。 そういいながらも、手馴れた様子でこいちゃんは冷蔵庫を開け湯を沸かし、飲み物を作ってる。 「つーか、何でこいちゃんが仕事してんだよ。俺がするし」 「何言ってんの、ハルタさん、病人っしょ?オレ、見舞いに来たんだからこき使ってよ」 「じゃあ、モカがしろよ」 「えー?」 「や、最初はそう言ってくれてたんだけどさ、見てる方が心臓に悪いわけだよ」 他所ンちの冷蔵庫勝手に触って悪いけど、なんて言いながらも鼻歌交じりに生姜湯が出てきた。 ついでー、と、友花の前にはジンジャーエールがおかれたり。 ああ、こういうとこか、と思った。 椎さんが悔しくなるっていっていたスキルって。 何でもないことのように、ごく普通に、出来ることをしてるだけって感じなのに。 なのに、このさりげなく出てくるもののレベルの高さ。 「なんかやになるなぁ」 拗ねた口調で友花が言った。 「あたしの周りの男って、何でこう両極端なんだろ」 「そうなの?」 「そ。おとーさんとおにーちゃんは家事無能。るんちゃんはこいちゃんさんと一緒。妙に器用」 言葉は選んでいるようだけど、ドキッとした。 こいつも口が悪い。 元カノみたいに、言い出すんじゃないかって。 俺はいい。 ともかの口の悪さには慣れてるし、実の兄だから何言われても。 けど。 「それは慣れでしょ」 あっさりとこいちゃんが笑う。 「友花ちゃんも家事に慣れたら器用にいろいろ出来るって」 「そうかな?っていうか、こいちゃんさん慣れてるの?」 「オレ?旅生活してたからねー。自分で出来ることは一通り。それに、家事だけじゃなくて色々と便利な人なんだよ、これで」 「へえ」 「あ、でも、今はハルタさんちと思ってるし、友花ちゃんがいるからちゃんとしようって注意してるからね」 「はい?」 「ちゃんと、してるでしょ」
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