As You Wish

27/34
前へ
/34ページ
次へ
「オレにとってはこっちが普通」 と、出された鍋ごとの煮込みうどん。 はふはふしながら食べて、出された風邪薬を飲み。 もう寝たら、とは言われて一旦部屋に戻ったけど、やっぱり気になって寝巻きのジャージを新しいものに着替えて、また、台所に戻った。 「ハルタさん?ぶり返さないように、寝たら?」 「大丈夫」 「そ?」 ホンの少しの間に、使った食器は片付けられて、清められた台所。 俺が手を出さずにこの状態になるのは、母さんがいた頃以来。 「じゃあ、お茶でも淹れようか」 「んー」 「温かかったら、なんでもいい?」 「冷凍庫に干し柿ある」 「あ、お茶請けにいいよね。じゃあ、玄米茶あるから、それにしよっか」 あるからって…いや、あるんだけど。 妙に馴染んでるこいちゃんに、苦笑い。 話をしながら、火にかけられるヤカン。 取り出される急須に湯呑。 手にした湯呑をしげしげと眺めていたこいちゃんは、少し困った顔で俺を見た。 「ハルタさん、これ、どれが誰のとか決まってるでしょ」 「あ、俺の『風林火山』。客用のは上の段」 「この寿司ネタのは?」 「兄貴のだけど…今夜は帰らないし、そっちがいいなら使っていいよ」 「じゃあ、借りちゃおう。お兄さん、遅い日多い?仕事?」 「いや、単身赴任」 「…お父さんもって言ってなかった?」 「ああ。だから、今はモカと二人だ」 「じゃあ、さみしいねぇ」 こいちゃんはなみなみと茶を淹れることにしたらしく、大ぶりの湯飲みを選んだ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加