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「オレにとってはこっちが普通」
と、出された鍋ごとの煮込みうどん。
はふはふしながら食べて、出された風邪薬を飲み。
もう寝たら、とは言われて一旦部屋に戻ったけど、やっぱり気になって寝巻きのジャージを新しいものに着替えて、また、台所に戻った。
「ハルタさん?ぶり返さないように、寝たら?」
「大丈夫」
「そ?」
ホンの少しの間に、使った食器は片付けられて、清められた台所。
俺が手を出さずにこの状態になるのは、母さんがいた頃以来。
「じゃあ、お茶でも淹れようか」
「んー」
「温かかったら、なんでもいい?」
「冷凍庫に干し柿ある」
「あ、お茶請けにいいよね。じゃあ、玄米茶あるから、それにしよっか」
あるからって…いや、あるんだけど。
妙に馴染んでるこいちゃんに、苦笑い。
話をしながら、火にかけられるヤカン。
取り出される急須に湯呑。
手にした湯呑をしげしげと眺めていたこいちゃんは、少し困った顔で俺を見た。
「ハルタさん、これ、どれが誰のとか決まってるでしょ」
「あ、俺の『風林火山』。客用のは上の段」
「この寿司ネタのは?」
「兄貴のだけど…今夜は帰らないし、そっちがいいなら使っていいよ」
「じゃあ、借りちゃおう。お兄さん、遅い日多い?仕事?」
「いや、単身赴任」
「…お父さんもって言ってなかった?」
「ああ。だから、今はモカと二人だ」
「じゃあ、さみしいねぇ」
こいちゃんはなみなみと茶を淹れることにしたらしく、大ぶりの湯飲みを選んだ。
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