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急須に少し多めに入れられる茶葉。
冷凍庫から出された干し柿は、俺に数を確認してから、自分の分を足して電子レンジへ。
本当に手馴れた…多分、俺だったらするだろう手順と同じ手順。
付け焼刃じゃない、身に付いた様子を見ていて、ホッとする。
そして、急に当たり前に世間話みたいな会話の中で出た、同情の色のない『さみしいねぇ』に、言葉を失った。
「ハルタさん?」
「さみしい?」
「さみしいでしょ、家族が急に減ったら。家の中、スカスカした感じがするよね」
「わかるんだ?」
「そりゃあ…最初は解らなかったけどさ。いろんなところへ行って、いろんな人と触れ合ってたら、見えてくるよ」
湯が沸いてコンロの火を止め、茶を淹れる。
すぐ出てくるかと思ったのに、先に目の前に置かれたのは干し柿の方。
何かを入れてかき混ぜてから、目の前に湯呑が置かれる。
「何か入れた?」
「砂糖を少し。体が弱ってる時にはいいって、教わったから。干し柿もいいよね。柿は体の熱とるし」
薬膳薬膳~、と、自分も椅子にかけながらこいちゃんが笑う。
「今日、ハルタさん家に来たとき『不在がある』家だって思ったよ。時々あるんだよね、そういう家」
「……時々ある?」
「うん」
思い出すような顔つきで、こいちゃんは言葉を続けた。
「乗り越えたっていうことなのかもしれないけど、最初から無くしたことなんかなかった、って、ことになってるとこのほうが、多いんだけどさ。あと、そういうもんだよねって、ことになってる家とか。
でも、時々ある。仲が良かったんだろうなって思う、おじいさんとおばあさんの片っぽが死んでたりとかさ、単身赴任に慣れてなかったりとかさ、急な離婚とかのあと。
いたはずの人がいなくなっちゃって、ものすごくさみしいんだなぁって、わかる」
なるほど。
だから『不在がある』
「うちはそうなんだ?」
「ああ、悪い意味じゃないよ。そうだっていうだけ。ハルタさん、頑張ってんだなぁって、感心しちゃったよオレ」
「は?」
どこにどう繋がるんだか、よくわからないこいちゃんの言葉。
多分。
俺は理屈っぽいんだろう。
だから、こいちゃんよりは椎さんの方に感覚が近いんだ。
時々『わけわかんねーこと言ってんじゃねえよ!』って、椎さんがバインダー飛ばしてるのがよくわかる。
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