As You Wish

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こいちゃんは、感じ取るのはすごく敏感だけど、ほかの人が理解できる言葉にするのが苦手そう。 「台所もなにもかも、お母さんがいた時のままなんじゃない?すごく、そんな感じがする」 感じ取れるこいちゃんだから、わかったのかな。 俺の家事は母さんの仕事をなぞってる。 本来は意識しないでそうなっているもの、なんだろうけど、俺の場合はきっちりなぞるのが癖みたいになってる。 洗剤一つも、目につくところは安売りのものではなくて、母さんが好んで使っていたもの。 最後の数ヶ月、そうしていた名残。 「だから、却って離れてくのかな」 勝手に口から言葉が飛び出た。 ああ、ホントは俺、こんなこと思ってたんだ。 そう気がついた。 家の中を母さんがいた頃のように整えていても、父さんや兄貴は仕事って理由で家から離れた。 姉貴は結婚して出て行った。 多分、友花も短大卒業と同時に出ていくんだろう。 もしかしたらって、ホントは気になっていた。 母さんはいないのに、いた頃のように家を整えているから、離れていっちゃうのかなって。 「落ち着いたら、懐かしくなるよ」 「そういうもん?」 「そういうもん」 はむはむと干し柿を咀嚼しながら、こいちゃんはのんびりと微笑んだ。
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