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しゃべりながらもそつなく周りに酒をすすめて。
俺の隣の彼女にも、上手に飲み物をすすめて料理の追加を頼んだり。
すげえなぁ。
じーっと見てたら、気が付いたようにこいちゃんが目を瞬かせた。
「何?ハルタさん、オレになんかついてる?」
「や、妙に宴会慣れしてんなと思って」
「ああ、うん、してる」
「否定はしないんだ」
「ホントのことだし」
「実は酒好き?」
「じゃなくて」
困ったように頭をかきながら、こいちゃんが言った。
「オレ、放浪の人だったから、おっちゃん達とよく呑んでたんだよね」
「放浪の人?」
こいちゃんに圧倒されてた隣の彼女が、目をぱちくりさせる。
「そそ。高校中退して、バイクで旅してたの」
「すごいですね」
「でも、何もやってないよ。ただふらふらしてただけだから」
だから今、新入生だし。
と、照れたようにこいちゃんは続けた。
「このご時勢に、旅生活ってよくやるね」
「うん、オレもそう思う」
「辛かったんじゃない?」
「や、楽しかったよ?俺には向いてる」
人間向き不向きがあるからさ~、なんて、コップに入ったビールを飲む姿が、妙に様になってたりして、少し驚いた。
「こいちゃんさん…?」
おそるおそる彼女が呼びかける。
ニコニコとこいちゃんは、それに応えてた。
「はい?」
「って、すごく逞しそう」
「筋肉、触ってみる?」
わざわざ、腕まくりとかして見せる素振りまで。
知ってたけど、なかなかサービス精神旺盛な人だ。
「え、やだ、そうじゃなくって、生活力ありそうって意味で」
少し頬を染めて、慌てて彼女は目の前で両手を横に振る。
「なんだ、そっち?うん、おっちゃんに馴染むのは自信ある。でも、学生さんにはどうかな~、オレ、オシャレとかわかんないし」
「え…はあ…」
本気なんだか煙にまいてるのかよくわからないけど。
これは仕掛けてたりとかすんのかなぁ、なんて思ったりしたけど。
クスクスと飲み会に馴染みまくってるこいちゃんと、しゃちほこばってる彼女の姿はほんとに対照的で、面白かった。
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