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俺――山本悠汰(ヤマモト ハルタ)、当年とって22歳の大学生、男――の朝は、早い。
って、就活してない大学四回生の男子としてはってことだけど。
ついでに言うなら、今朝はトクベツに早い。
何故なら単身赴任してた親父が戻ってるから。
学生の俺と妹だけの時より、三十分は確実に早い。
親父に対して、大人なら自分で起きて自分でしたくしろっていう突込みは、この際なしの方向で。
そういうとこに才能を発揮できる人ならとっくにしてるだろうし、こっちも苦労してない。
朝起きだして着替えをして、まずすること。
台所に行って、いつのころからか当たり前のように毎年同じ壁に貼られている、カレンダーの確認。
一応いるはずの5人家族の、あまりかち合うことのないスケジュールが書いてある。
仕事やバイトの予定とか、食事の有無とか、主にはそんなこと。
今日の弁当は親父と俺の分でいいのか。
昨夜の残り物で適当に弁当をつめ――妹がいらないなら、無駄に彩とか考える必要はない――一旦洗い場を片付ける。
やかんに水を入れて火にかけて、トースターにパンを入れる。
「もかー、起きろよー」
階段下から妹に声をかけて、親父の部屋のふすまを叩く。
一応、ノックの代わり。
「親父、時間」
「んー」
声をかけるだけかけて、あとは本人の自覚に任せよう。
こっちだって朝は時間がない。
さて、次の行動。
家は人が住まないと痛む。
って言うけど、人が住んでいたってちゃんと空気を動かしていないと、家は荒んでいく。
だから、きちんと毎日光を入れて空気を入れ替えなきゃいけない、のだそうだ。
今となってはそうしないからってうるさくいう人はこの家にはいないけど。
でも気になってしまうんだから、仕方がない。
客間や元兄貴の部屋の雨戸を開けて、カーテンを閉めなおす。
このあたりでトーストができてるはずだから、台所へ戻り、改めて朝食の支度。
ヨーグルトとバナナ。
後はその季節の果物。
最低でもそれくらいは食べなさいと言われていた、ホントに最低限の朝食。
トーストにマーガリンを塗って皿に置く。
飲み物はおのおの適当に、の意味でポットとカップとインスタントコーヒーやらティーバッグやらの瓶を並べる。
「友花ー、トースト冷めるぞー」
階段を上り自分の荷物をとりに部屋へ行ったついでに、もう一度妹に声をかける。
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