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メールを送りつけてきたのは、つい、一昨日まで俺の彼女だった。
大学で入ってる写真部の後輩。
スナップ写真風の、変にひねってない作風の写真を撮る子で、その写真から読み取れるとおりの子だった。
友花にも通じるところがある、可愛くてキツイわがままを言う、ごくごく普通の子。
新歓コンパで意気投合して、彼女の方から申し込まれて、何となくそんな風になった。
付き合い始めは何となく、でも。
それでも、ちゃんと好きだった。
暇を見つけてはデートにも行ったし、可愛いと思っていたから求められればプレゼントだってしたし。
そりゃあもう、お年頃ですから。
ええ、否定しませんともそういうお年頃ですから、向こうにその気が見えれば、そういうことだっていたしたりもした訳で。
もしもこのまま付き合って言って、先を求められたなら。
うん、将来的なことだって、考えてみてもいいのかもしれないとか。
それくらいにはちゃんと、好きだって思っていた。
それが、あのメールだよ。
何を考えているのかわからない、っていうよりも、青天の霹靂。
いきなり振られちまうとは。
それも、家事ができるっていう理由って、なんだそれは。
っていうのが、正直なところ。
納得できなくても、こうなった以上、追いかけたって無駄なんだなってことくらいは、付き合う中で気がついてた。
同じサークルに所属してるって言っても、人数がやたらと多くて自由度が高い写真部。
自由度の高さといったら、そりゃもう、半端ない。
使っている機材から現像方法から被写体まで。
人それぞれ好き勝手だ。
年に一回の写真展に作品を出しさえすればいい訳だから。
その上に、クラブボックス――いわゆる部室が二部屋ある。
ミーティング用の普通仕様の部屋と現像用の暗室と。
そんな訳で。
自由度が高い分、会おうと思わなければ会えないわけで。
逆をかえせば。
気まずくなったって、会わないでおこうと思えば退部までせずに済むわけだ。
しばらくはバイトにでも明け暮れて、ボックスに顔を出さないでいよう。
メール1コで彼女に振られてしまった俺は。
そう思っていた…
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