第1話

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月は見ていました。窓際に飲み干したマグカップが置いてあります。でもよく見るとマグカップはもう1つありました。並んで2つあったのです。1つはまだ温かくて、1つは冷えきっていました。マグカップは2つとも無言でした。 月は見ていました。ファーストフード店の前で少女は誰かを待っていました。月は風に「なかなかうまいことをやったね」と話しかけました。風は「チラシが可哀相だったからね」と言いました。少したつとバイクに乗った少年が少女のところにやってきました。2人は照れくさそうに何かを話すと、少女はバイクの後ろに乗りました。月は2人が転ばないように、いっぱいの光で夜を照らしました。2人を乗せたバイクは海岸沿いの道を走って行きます。あのライブ会場に向かっているのです。チラシが教えてくれたあのライブ、少女と少年は潮風を受けながら気持ちよく走っていきます。 月は見ていました。その晩、少女と少年は仲直りをしたようです。チラシはなかなか大きな仕事をしました。月はとても満足でした。月はなるべく朝が来ないように、ゆっくりゆっくり帰り支度をしました。
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