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真織の父はどうにもならないほど落ちぶれた人間だった。
酒癖が悪いとか、家族を省みないとかはないのだけれど、社会的にまるで駄目人間で、趣味が借金作りの大馬鹿者。
母も父が作った借金を苦に逃げだしてしまった。
母が出て行った当時、真織は小学生で、一人娘なのにもかかわらず、母は真織を置いていった。
定職にもつかず、毎日借金を作って帰ってくる父の代わりに、真織は小学生ながら働いた。
毎朝の新聞配達とか、牛乳配りだとか、それでこそバイトと言えるほどのものはなかったけれど、小さなお手伝いをしてはお小遣いをもらって来た。
父にそのお金を手渡せば、あっという間に娯楽に消える。
スズメの涙ほどのお給料を父に渡した際、すぐにご馳走だと食べきれないほどの食材を買ってきた時には心底飽きれた。
食にそれほど困っていたわけでもないのに、真織に美味しいものを食べさせたいと勝手な理由をほざいて、あっという間にお金を物に変えてしまう父親は、マジシャンでもなんでもなく、ただの金遣いの荒い人だ。
真織は小さいながらもお金の有り難味を嫌と言うほど痛感し、自分が生きるためだけにお金を稼ぎ始め、自分でお金の使い方を学んでいった。
せめて高校までは卒業して、安定した職業に就けたらそれでいい。
自分のために目標を掲げ、今までコツコツとがんばってきた。
勉強が出来なといい就職先にはありつけないと、バイトの合間に勉強をし、遊び歩く父を放置して自分が生きるために、それでこそ必死だった。
おかげで頭の良さは、学年で十位以内に入るほどにまでなった。
努力を惜しまない真織を、ただ頭がいいというだけで羨ましがる人も居たけれど、だったら努力しろよと言いたい。
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