私!買います!

6/7
754人が本棚に入れています
本棚に追加
/240ページ
まだ幸せに酔いしれる緒凛の、目を閉じた甘い顔が至近距離で視界に飛び込んできたが、今はそれどころではない。 思わず緒凛の胸元を押し返せば、緒凛は驚いて目を開いた。 「何だ? どうした?」 「いや……あの、その……。わ、私は一体……なんでベッドに押し倒されたのだろうかとお聞きしたいのですが?」 しどろもどろに真織がそう言えば、緒凛はキョトンとした表情を見せた。 それは誰がどう見ても、真織が緒凛に押し倒された状況だ。 ベッドの上に、真織を下に組み敷いた状況で上から真織を見つめる緒凛は「え?」とした表情を見せて真織に言う。 「何でって……そりゃあ流れからしてセッ……」 「言わなくていい!! ってか何でそういう流れに持っていこうとするわけ!?」 組み敷かれた状況で、暴れだした真織の言葉に、緒凛はむっとした表情を浮かべ真織に訴えた。 「お前……まさかこの後に及んで拒否するつもりか?」 「と、当然でしょう!」 「馬鹿を言え! 俺はもう限界だ!」 「げ、限界とか言わないで! 我慢してよ!」 「無理に決まってるだろうが! 毎晩毎晩お前と同じベッドの中にいて、理性を保てていた昔の自分を賞賛したいくらいの勢いだ!」 「ばっ! 恥ずかしいこと言わないでよ!」 「恥ずかしいことなどあるものか! 恋仲になった男女が同じベッドの上に居ながら何もしないのはそれでこそ可笑しいだろう!」 「やっ、ちょ、そ、それはそうかもしれないけど! まだパーティは終わってないし! 私だってお父さんと帰らなきゃいけないからっ!」 「安心しろ、これ以上俺たちに出番はないし、直弥さんにはお前の外泊の許可をすでに取ってある」 「い、いつの間にっ!」 あまりにも用意周到な緒凛の行動に、真織は絶句していれば、緒凛はぐっと真織に顔を近づけてニヤリと笑った。 「大丈夫だ、優しくしてやる」 「嬉しくない!」 「なんだ? 激しいのを望んでいるならそれでも構わないが?」 「そういう意味ではなくて! 心の準備ってものがっ――」 「ならば三十秒待ってやろう」 「短っ!」 「贅沢を言うな」 「甘えろって言ったのは誰よ!」 「そういう意味で言ったわけじゃない。まだ抵抗するか?」 「するよ!」
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!