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むしろ真織は親の金で学校に通っているアンタ達が羨ましいよとさえ思った。
他の学生は高校生活を十分に――いや、十二分に満喫している。
バイト三昧の真織は遊ぶことも、おしゃれすることも知らないまま高校生活を送ってきている。
時々うらやましいと思う反面、お金がもったいないという貧乏性の考えが働いて、それほど興味もなかったが。
自分のことで手一杯になっていたが、父の世話も忘れているわけじゃない。
ご飯の準備はいつも真織がしているし、洗濯、掃除など家事全般も全てそつなくこなしている。
毎日父が作ってくる借金の説教もその世話の一環だ。
莫大な金額に膨れ上がった借金の返済を取り立てる、こわーいお兄さん方がこのボロ屋に殴りこみにくるけれど、父の代わりに顔を出す羽目になる真織とはどういう理由かは知らないが友好的だ。
暴れる真織から逃げ惑う父の情けない姿を見ながら、今日もまた勢いよく立て付けの悪い玄関ドアが叩かれた。
「二宮さぁーん。金返せゴラッ!」
「居るのわかってんだぞ! 出てこいやっ!」
家がボロなのがわかっているから、あまり強く玄関を叩かないでいてくれる怖いお兄さん方に感謝しながら、真織は呆れた顔で父に振り返ると、父はいつものようにフルフルと弱々しく首を横に振った。
真織は怒りを抑えられないままドスドスと足音を聞かせて玄関に向かい、ガラリとドアを開ける。
「うっさいっわねっ! 今それどころじゃないのよっ!」
開口一番にそういえば、玄関ドアの向こうに居たお兄さん複数人が、ギロリと真織を睨んだ。
スキンヘッドにサングラスをしている者や、金髪でオールバックをした人も居る。
こういう人達は借金取りだからなのか、結構立派な服装をしているけれど、趣味はそれほどよろしくない。
口に出しては言えないが、高い服を着たらいいというわけでもないのは彼らからよく学んだ。
玄関から出てきたのが真織だと知ると、お兄さん方は顔に似合わない笑顔を浮かべながら真織に言った。
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