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売られて買われて人生転機?!
冗談はこの多額の借金だけにしてくれよ。
怒り狂いながらもその怒りをぶつけられないでいる真織(まおり)に、無精ヒゲを生やした父は、ゲヘヘッとえげつない笑みを見せて言った。
「真織のこと売っちゃった。ごめんねぇ?」
「言ってることの重要さと発言の軽さの比率が合わん!」
キレるものかと思っていたけれど、父のどうしようもない言葉に、真織はとうとう堪忍袋が爆発した。
それはもう、緒が切れるを通り越すほどの腹立たしさ。
元々真織が持ち合わせた堪忍袋などたかが知れているのだが。
今時ちゃぶ台を使ってる家庭なんてありはしないけれど、真織の家は昔の名残を残したちゃぶ台食卓。
粗大ゴミから拾ってきたという余談はまた別の機会にさせていただくが、そのちゃぶ台を漫画みたいにひっくり返して父を罵倒した。
「何っ!? どういうこと!?」
真織が声を荒げて言えば、父は怯えながらも言った。
「うん……だからね、真織を売ってくれたら、借金の全額負担してくれるって人が居たから――売っちゃった」
「売っちゃったじゃないわよこの馬鹿親父!」
「ひーっ! 真織落ち着けっ!」
「落ち着いてられるかっ!」
真織の怒りはとどまることを知らず、もともと半崩壊だった小さな木造の家の天井から、パラパラと埃が落ちてくる。
擦り切れた畳はミシミシと音を立て、半透明の窓はピリピリと真織の怒りを見事に表現してくれている。
喜怒哀楽がはっきりと家に反映されるのは、耐震偽造ではない。
多分、昔の建築基準法ではちゃんと基準を満たしていたのだと思うし、まあ言わせてもらえば古家なのだ。
――建築基準法なんて知らないけれど。
鼻息が荒いまま真織が父親を睨み続けると、父親はヘコヘコと平気で娘に土下座を繰り返していた。
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