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いやぁんもう。あからさまな反応が面白くて、つい加虐心に火が点いちゃうじゃないのぉ。
あたしに集まっていた視線があたしの発言を聞いた途端にまさに光の如くといった感じで逸らされたのを感じたから、わざと勢いよく振り向いて見せた。
そしたら視線だけじゃなくて顔ごとあたしから逸らす女子達の群れを見つけてしまって……。
「このワンピース、着てみようかしらぁん!」
なんて、声を張り上げてみた。
通りに面して在ったのは、ティーンをターゲットにしているだろう可愛い外装をしたショップ。
お客さんが興味を持って店の中に入ってくるようにと、真っ白でレースをふんだんにあしらったミニ丈のワンピースをマネキンに着せていて、あたしはそれを指差しながら体をくねらせた。
ぴしり、と、何かが固まりついた音を聞いたのは、きっと幻聴じゃないわよねん。
「可愛い可愛い。龍樹が来たら店員さん困るし、それに周りの子達の反応を楽しまないのー」
「やぁんさっすが伊真ちゃん。分かってるじゃないのぉん」
流石幼馴染というべきなのかしら。
長門伊真(ナガトイマ)こと伊真ちゃんは、黄色のモッズコートのポケットに手を入れて目を半眼にさせて、あたしの言動を見破ってる。
今日のこの日、そして今ここにあたしがいるのは、伊真ちゃんが誘ったからだ。
あたしより頭一個分と半分ぐらい身長の低い伊真ちゃん。
前髪ぱっつんのショートボブヘアーの彼女は、髪が短いから首回りが寒いみたいで、周囲の様子を見ながら首を引っ込めたり時折手で擦ったりしている。
もう。
女子の体は冷やしたら駄目にできてるのようっ。
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