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 ヒュッヒュッ  何かが風を切る音。  ボゴン!  鳥が衝突したように見えた一撃。  ゴーレムの頭部が砕け散った。  サラサラと砂のように崩れていく。  ゆっくりと目の前に降り立つ白い鳥。  目を見張る少女。  目を閉じる男。  男のまぶたの裏に輝くのは庭園での一時。 「また武術を教えてくださいな」 「私は異国の第二王子とはいえ同盟の人質です。あまりお近づきになるのは……」 「いいえ。あなたは私の先生です」  金の髪の幼子はドレスのままファイティングポーズをとると、シュシュっと手を動かす。  長手袋の残像が華麗なワンツーだと見切れる従者はいない。 「この勇ましい姫君にはかなわぬな……」  屈託のない笑顔。  目を開ければ、紅を差した唇が不適に笑う。  顔の上半分を覆う鉄の仮面。白いドレスは所々鎧のように装飾されていた。
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