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 寡黙だった男が先に口を開く。 「城も城下も酷い有様だな」 「今さら何をしに?」 「止めに来た。これ以上、無理をするな。させるな」  わらわらと武装した人々が集まってきた。  だが、どれも不恰好で腰が引けている。一般人が武装しているのだ。 「私が死んだだけでは、呪いは終わらない」 「死なせるものか。止めに来たのだ」 「今の私は止まらない。あの時とは違う」 「……」 「確かに私の心を折れば、魔物がこうも王都に集まり来ることはなくなるだろう」  仮面の令嬢は美しい手袋をつけた両の手を顔の前で握った。  まるでググと音が聞こえてくるかのような力強さが、空気を歪める。 「だが、魔物がいなくなるわけではない!いずれまた、あの時のように気まぐれに群れを成し、押し寄せる!父が死んだあの時のように!」 「ううっ……」  嗚咽を漏らす周囲の人々は、先王を愛した国民達。
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