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 男に向かってあの頃のような白い長手袋の先を固め、突き出す。  ドン!  身をかわした男の後方にいたのは、毛のない熊か猪のような魔物。  ベキッ!バキッ!  森の木々をなぎ倒し吹き飛んでいく。 「姫がトロルを……」  少女はあわあわと手や口を動かす。  そして、姫の次の一撃は間違いなく男に向いた。 「私を止めなかったアナタが!」  ズドン!  同じ一撃を受け止める、男の大きな手のひら。 「止めた!俺は止めただろう!」 「いいえ!アナタは全力で止めなかった!アナタにだけはそれが出来たのに!」  ググッ 「!」  受け止めたその場から、仮面の姫は力押しで拳を振りぬいた。  ブワッ  大きな男の体が浮いた。  ザザッ  十数メートル飛ばされて男は片膝をつく。
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