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「な、なんだ今のは!」
兵隊達は驚き慌てふためく。巨体の青年が軽々と宙に舞ったのだ。
「あれが、魔物を呼び寄せる代償に得られる力じゃ……」
「副長殿!ご無事で!」
血染めの老兵が近衛兵たちに支えられる。
「姫は、自ら全ての魔物を許さぬつもりじゃ……。ならば、地獄の果てまで付き合おうぞ」
ガラガラと音を立て、崩れた岩壁の中から青年は立ち上がった。
「馬鹿なことを申すな!そのような力!すぐに不幸を呼ぶぞ!」
「今守れぬのならば!それ以上の不幸などない!」
姫の一括に空気が呑まれていく。
姫自信もまた、目つきが変わっていく。
それはもはや、守りたいもののために戦う目つきではない。
「魅入られているか……。致し方なし!御免!」
地を蹴り拳を振り上げる。
今は強引に魔力の瘴気を突破し、気を失わせてでも逃げるべき時。
だが、その一瞬、姫は受け入れるように目を閉じた。
「くっ……」
殴れなかった。
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