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 青年が躊躇すると、今度は姫が目を開けて懐に飛び込んだ。 「……馬鹿な人っ!」 「う、ぐっ……」  掌で鳩尾を打ち抜く。  ドッ  ズズン  大きな青年の体が沈んだ。 「爺、先生を祖国へお送りなさい」 「よろしいのですか?」  一筋の涙。姫は拭かない。最後の涙という決意。 「これは、この国の問題です」 「承知いたしました」  姫は青年の乗っていた馬に跨り、戦っている兵隊達と父の骸の元へ駆ける。  魔物たちとの壮絶な戦いへ。  姫の頭上にあった古書が燃え散った。 「さあ、悪魔よ。身を捧げましょう。ここからは遠慮無用です」
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