5人が本棚に入れています
本棚に追加
郊外の川辺で大あくびをする少女。
「朝日も鳥の声もなし、か」
白馬だけがヒヒンと鳴いた。
「それが今のこの国だ」
青年は水浴びをして髪を切り、髭を剃っている。
大岩の裏で少女は呟くように話しかけ続けた。
「あれが、ポワンの姫か……。まぁ、確かにアレじゃ、女と呼んでいいか分からないですよね。怪物です」
「……女だ。間違いなく」
遅い返事に少女は意地悪するように言った。
「間違いなく……愛した女?」
ぬっと強靭な肉体が横切る。
少女はとっさに背を向けた。
「じょ、冗談ですよ。でも、わがままなお姫様だね」
「割り切れぬのだ。全てを救いたい気持ちも分かる」
「でも、結果的にはそんな気持ちも、国民ごと呪いに飲み込まれちゃったわけだ」
「……まるで禁書の悪魔が、じわじわと消耗しきるまで楽しんでいるかのようだな」
着替えを終えた男が「よし」と一言。
そこには野獣のような大男はいなかった。
翻るマントの中は金糸をふんだんに使った白い騎士服。
金の髪の逞しくも麗しき王子の姿があった。
「……ヤダ、イケメン」
最初のコメントを投稿しよう!