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 強国の象徴とも言える様な闘技場。  ここしばらくはただの訓練場となり、壁は風化し始めている。  入り口の前には歴戦の傷を鎧に刻んだ兵隊達がいた。 「久しいな」 「もはや親衛隊、近衛兵含めてこの老兵だけとなってしまいました。本軍も僅かばかりに」  かつて姫のそばにいたお世話役は隻腕、隻眼になろうともまだ耐え抜いていた。 「何故立ちふさがる」 「お引取り下され殿下。もう後には引けぬのです」 「玉砕というわけか」 「この国は滅びるでしょう。しかし、一匹でも多くの魔物を道連れにします」 「滅ぼさせん」 「これが姫の望みなのです!」 「それは違う」  王子は言い切った。 「……さすがにございまする」  老人はぼそりと言った。  ダダッ  その通りだと分かっていても尚、王子に槍を向け突進する兵たち。 「今の俺は老人だろうと女だろうと加減はせぬぞ!」 「承知の上!」
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