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「はぁっ!」  ヒュヒュン  気合いと共に迫る連打。  パパン!  両腕を前に、大きな体を亀のように畳んで身を守る王子。  一撃ごとに巻き起こる爆風。  観客席まで衝撃が空気を震わせ、応援どころではない。  闘技場は、ただ二人の空間だった。 「すべてが遅すぎた!もうアナタの知ってる私ではない!アナタにはなにもできない!」 「俺は!俺を捨てても!」  ついに王子は姫の倍はあろうかという拳を振り上げた。 「遅すぎたのよ!」  姫は迎撃するかのように攻撃の態勢を変えない。  ゴオッ!  投擲のように迫り来る拳はすべてを叩き潰すかのよう。  その大きさは何十倍にも見える。 「はっ!」  思わず飛び退く姫。  ドゴォッ!  石柱を砕いても止まらない。  ズズン!  そのまま拳が固い地面を割ると、闘技場全体が大きく揺れた。
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