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壱
森で山烏がギャーと鳴く。
「勘弁して下さいよ。ボクが荷を売らないと病気の母の薬がですね」
薄暗い道に行商の荷を背負った、か弱そうな子供。格好の標的である。
「そうかいそうかい。この世には優しい神も気まぐれな悪魔もいねぇなぁ。へっへっへ」
下卑た数人の山賊が馬上から十二、三歳ほどの子を見下ろす。
「いたいけな少女がピンチの時は、白馬の王子様が助けてくれるんですよ」
膝丈までのズボンにシャツとベスト。
スカーフを添えてハンチング帽を被っている。
こぼれる赤毛の短髪はモミアゲだけ少し長く、まるで少年の冒険者。
「なんだおめぇ、女か。じゃあ、生かしておいてやる」
「ほんとに?」
「売れば金になるからな」
「そんな!」
ヒヒン
上品な馬のわななき。
「ん?」
「ほら、白馬のおうじ……」
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