1/6
前へ
/40ページ
次へ

 森で山烏がギャーと鳴く。 「勘弁して下さいよ。ボクが荷を売らないと病気の母の薬がですね」  薄暗い道に行商の荷を背負った、か弱そうな子供。格好の標的である。 「そうかいそうかい。この世には優しい神も気まぐれな悪魔もいねぇなぁ。へっへっへ」  下卑た数人の山賊が馬上から十二、三歳ほどの子を見下ろす。 「いたいけな少女がピンチの時は、白馬の王子様が助けてくれるんですよ」  膝丈までのズボンにシャツとベスト。  スカーフを添えてハンチング帽を被っている。  こぼれる赤毛の短髪はモミアゲだけ少し長く、まるで少年の冒険者。 「なんだおめぇ、女か。じゃあ、生かしておいてやる」 「ほんとに?」 「売れば金になるからな」 「そんな!」  ヒヒン  上品な馬のわななき。 「ん?」 「ほら、白馬のおうじ……」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加