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「そんな!初めからここに追い込むようにしていたんだ!」  少女は馬上で両頬に手を当て、身を震わせる。 「俺の道で通行料を払わねえ奴は久しぶりだな」  中央には箱に座った不恰好な肉厚の鎧兜。まるで巨大な甲殻類のようだ。 「あれは!キングオークの突進でもビクともしないって噂の山賊ですよ!」  少女の言葉を聞いていないかのように白馬の手綱を離し、一人前に出る。 「おもしれえ」  山賊頭は大きな斧を携えて対峙する。じりじりと縮まる距離。  目線は腰元の高価そうな装飾の剣。だが、男の体格には合わず短い。  山賊の戦斧は矛の如く長い。思わず笑みが漏れる。 「ばはぁ!」  十分なリーチを生かし振り下ろす一撃。  ズズン!  地を揺らしたのは踏み固められた道を割った斧ではない。
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