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(嘘を言っている………可能性は……いえ、駄目ですね)
メリットがない。アルーネはその結論に至るまでそんなに時間を要することはなかった。
アルーネは、手を顎に添えて、少し考えたフリをしながらレコードを少し見た
「………『住人』と言う、言い方はまるで、他にも人が居るみたいですね」
アルーネの問いに、レコードは小さく微笑みながら、首を縦に振った
「居るよ。僕以外にも3人いる。でも、僕は紹介しないよ」
「何故です?」
「それはね」
レコードは、アルーネに近付いた。確かな存在感を醸し出しながら、だが、決して足音を立てずに。ゆっくりと、それでいて繊細に歩いてくる。
そして、アルーネが座っている椅子の周りを2、3mの間を開けて歩き出す
「自己紹介が嫌いなんだ」
「え?」
アルーネは、レコードの顔を見た。するとレコードは、しまったと言ってるような顔をした
「あ、ごめん。違うんだ、僕は他人の紹介が苦手なだけなんだ」
「あら?そうなんですか?」
「うん。僕はね、わからないんだ。人がどのように紹介してほしいか、どんな事を言ってほしくないのか。それがわからないんだ。僕は、他人の……心がわからない」
レコードは、小さく呟くとゆっくり、アルーネの目と目を合わせた。
レコードの紫色の瞳がアルーネを捉える。その瞳は少し悲しそうにアルーネは見えた
「成る程。理解しました。そう言えば、聞いていなかったのですが?」
「ん?なんだい?」
「私が、こちらに居る意味です」
「…………あれ?言ってなかったっけ?」
「いえ、まったく」
レコードは、顔に手を被せてアチャーと呟いた。その姿にアルーネは、可笑しくなりクスリと笑った
「むぅ、それじゃ教えるよ。君がこの世界に呼ばれた意味を」
「えぇ。どうぞ」
レコードはアルーネに急激に接近した。まるで恋人達がキスをするかのように、思いっきり
「え!?ちょ」
「君、人生」
レコードから仄かに香る甘い匂い。そして誘惑の声。アルーネが、彼女が恐れていた。禁断の物が彼女の理性を壊してゆく
「やり直してみないかい?」
「え?」
レコードのそんな一言で彼女の理性が、まるで電光石火の如く回復した
「この世界。アカシックレコードは記録する世界、そしてもう一つは」
「もう一つは?」
「やり直しができる世界なんだ」
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