松本基と小橋裕也

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およそ、情って字の入るものは、大抵曖昧だ。 情一文字は当然 友情愛情慕情も然り。 劣情も非情も未だに上手く説明できないし理解すら多分出来ていない。 それでいいのだと思う。 情のメカニズムを把握できたら、きっとコントロールすることもするだろう。 それはすでに 情じゃないんじゃないか? 借りたばかりの分厚いハードブック、 『ルシファーの失墜』をなかなか読み進められないまま、明日はあいつの見舞いに行く日だ。 この本を貸してくれた小橋裕也は中学のクラスメイト。 いや、もうじき元・クラスメイトになるかもしれない。 たいして話したこともなく親しくもない小橋の見舞いに、 毎週末を費やすのには理由がある。 おれが学級委員だからなんかじゃない。 小橋はきっとおれに、答をくれる。 そんな気がしていたから…。
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