第四夜

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 何でもよほど古い事で、神代に近い昔と思うんだけど、僕は戦をして運悪く敗けちゃって生け捕りになって、敵の大将の前に引き据えられた。  その頃の人はみんな背が高かった。ちょー高ぇ。アメリカのバスケ選手くらいある。そしてみんな長い髭を生やしてた。あご下からのびた髭はサンタクロースみたいに垂れ下がって、鼻下からのびた髭はぐいーんって鎌みたいに力強く曲がって黒光りしていた。革の帯を占めて、剣を吊るし、弓はアーチェリーのやつだった。これぞ機能美って感じに部品が組み合わさっててカッコよかった。  敵の大将はアーチェリーの弓の真ん中を握って、その弓をべろべろ舐めて、腰掛けている伏せた酒甕と同じ酒甕から酒をぶっかけて、またべろべろ舐めていた。その顔を見ると、周囲の古風な屈強さから離れた現代風のイケメンで、ワックスで髪の毛を盛って盛って兜のように仕上げていた。その頃、いわゆる兜というものは無論なかったからだ。
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