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義兄妹。
斎藤一ではなく山口一として俺が千歳と出会ったのは、確か数えで七つほどのときだったと思う。
その日は、木枯らしが吹き荒んでいて、寒さがとても厳しかった。
あのときの俺は、寺子屋の友達とひと通り遊び、今にも陽が落ちそうだったので家路につこうとしていた。
そこで目に入った小さな塊。
寒さで肩を疎ませながら寺の境内を歩いていると、隅っこにそれを見つけた。
最初は猫かと思っていたが、猫にしては大きすぎた。
気になったので近寄ってみると、なんとそれは、寒さに体を縮こまらせて必死に耐えていた千歳だったということを、俺は今でも覚えている。
ここで声をかけずにいることも出来たが、やはり出会う運命だったのだろう、俺はらしくもなく自ら声をかけた。
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