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『だ、大丈夫か?』
何故そう問いかけたのかというと、顔を俯かせたその子からは、ガチガチと寒さで歯を震わす音が聴こえていたからだ。
身なりも、いつ洗ったのか分からないみすぼらしいボロを纏っていて、こんな寒い日に外に出ていいような格好ではなかった。
俺が声をかければ、
『平気。あっち行って』
と、震える声でそっけなく言ったので、すぐに強がりなんだと気づいた。
こんな寒い格好では、親が心配するはずだ。
『ねぇ、早くどっかに行ってよ。いつまでそこにいるの』
『……お前がどこかに行くまで、動くつもりはない』
そのときの俺は何故だか目の前でうずくまるその子が気になってしまい、もしやすると……、そんな考えが脳裏を過るのでしばらく側にいることにしたのだった。
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