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あの後土方さんと別れ、千歳と探すために少し歩けば案外近くにいたので簡単に見つかった。
長屋に住む子供達と一緒になって石蹴りや鬼ごっこ、長屋の通りの間を駆けていたりした。
その姿は端から見ればいつも通りだったが、俺には何故か空元気としか思えなかった。
『おや、はじめくん来ていたんですね』
子供達から少し離れていた宗次郎が、俺を見つけてこちらにやって来た。
『ああ、千歳を迎えに来たんだ』
『今日は千歳さん、珍しく一人で来るものだから、はじめくんは風邪を引いているのものと思ってましたよ』
子供達と戯れる千歳。
鬼ごっこで鬼の男の子に腕を掴まれて、今度は千歳が鬼として子供達を追いかけ始めた。
キャッキャッと逃げ惑う声が、そこかしこから聴こえてくる。
それを暫く眺めていた宗次郎は、喋りにくそうに話し出した。
『千歳さんに何かありましたか?』
『何故そう思う』
『いつもと何だか違うんですよ。何でしょうね、元気なのにそれがどこか空を切っている様で……。やはり何かあったのでしょう?』
隠し通すことは出来ないか。
いや、初めから隠すつもなど無かったが、普段から見ている奴にはやはり分かるのだろう。
『千歳に縁談があったんだ』
『縁談ですか!? それはまた何故………いえ、私が口出しできることでは無いですね。
でもお目出度いことなのに、どうして千歳さんは──』
土方さんに話したように宗次郎にも同じことを、何故千歳の様子がおかしいのかを話した。
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