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『そんなことより千歳、自分の顔をよく見てみろ。とんだ間抜け面だぞ。泥だらけじゃないか』
『え? こんくらい平気だよ………って、間抜け面って何よ!』
この時期の田んぼは田植えが終えたばかりで、水が張っている。
その中に裸足で入ったのだから、当然足も汚れていて、手も泥だらけだ。
その手で今度は顔をこするものだから、顔にまで泥が付いてしまっている。
仕方ないな。
俺は懐から手拭いを取り出して、妹にするようにその間抜け面を拭き取ってやった。
『もっと年相応に振る舞え。年頃の娘が、こんなに足を出していいものか』
『うーん、そうかなぁ? なんか爺臭いよ、はじめくん。気にしない、気にしない』
『まったく……、いいからほら、足も出せ。拭いてやるから』
幼かった頃のただ細いだけの足とは違い、今ではふっくらと少しだけ肉付きのよい千歳の素足を、手ぬぐいで拭いてやった。
『はじめくん、ありがと』
『いいや。それよりも、早くその蛙を届けるんだろ?』
大事に両手の中にしまっているそれを、早くけん坊に届けたいらしく、千歳は浮き足立っている。
『うん。早く行こっ、待ってるはずだから』
『だが、その前に着替えが必要だな』
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