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時間を告げに来た内勤のスタッフに見送りのホストを選ぶように言われ、私はリュウジを指名した。 「ルナって本名?」 明らかに人の名前に偏見を持ったような表情で、リュウジが訊ねて眉をしかめる。 「本名だよ。片仮名でルナ。 リュウジは本名?なんだか全然 ホストっぽくない源氏名だけど」 リュウジに渡された名刺を、親指と人差し指で摘んでピラピラさせながら私は訊ねる。 「本名だよ。片仮名でリュウジ」 「片仮名で?」 私は何となくリュウジとの共通点を見い出した気がした。 「珍しいといえば珍しいよね。名前を書く時は楽だけど、親が面倒臭がりだったんだよ。」 そう言うとリュウジは 少しぎこちない手つきで携帯を操作し、 「ということで、連絡先教えてくれる?後で連絡するよ」 そうデータ交換をせがむ。 ということで、というのは、お互い名前が片仮名であることが共通しているという意味での、ということで、という事なのだろうか。
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