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「じゃあ、出ますか」
私がそう促すと、リュウジが
持つよと言って私のバッグを持ってくれる。
店を出ると店内の騒音から解放されると同時に、一気に異空間から現実に引き戻されたような感じがして夢から醒めた気持ちになった。
エレベーターホールでエレベーターが上がって来るのを待つ間も、
リュウジは短い会話を絶やさない。
絶やさないようにしている。
それは賑やかだと思われたい人間故の努力で、伝わってくる。
だけど賑やかだと思われたい人間を見ているのはなんだか痛い。
会話を絶やさないようにと必至になっている姿を見るのがなんだか痛々しくて、
会話を絶やしてしまうと空気が上手く流れていかなくなるという懸念だろうかとも思ったけれども、何だか違う。
穏やかに流れる空間だとしても、そこに潜在する互いを洞察し合うような空気を感じると私はいつも、何だかむず痒いような嫌悪を孕んだ気持ちになる。
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