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連れて行かれる、という感覚に陥る。 連行されてゆく。 私は静かに、電車というごくごく平凡で陳腐な乗り物にいつも連行されてゆく。 電車だけじゃない。私はいつも世の中の陳腐なものに振り回されてしまう。 陳腐なものというのは、世の中に有りふれている。 人の気持ちもそうだし、電車だけじゃなく、そこらに建っている電波塔の一つ一つも、工事中の建物も、花屋もドーナツ屋もバスも車も、すべてが陳腐で杜撰な産物に思える。目障りなものに過ぎない。 それらに包囲されて生きていることは、何かの拷問のようでもある。 何の拷問だ?これらは。まったく何の拷問だ?っつうの。 ぼんやりとした頭で、またモノグラム柄のバッグに目を戻し、「エル」と「ヴイ」の組み合わせの規則正しい羅列を数えてみたりする。 そして、私の視線に気付く事なく携帯を弄る事に没頭し、時々、走行する電車の振動でずれそうになるヘッドフォンに手を当てては、車窓に目をやったりする彼女もまた、 今日同伴する予定の客を面倒だと疎ましがっている陳腐な生き物なのだろうか、そう思った。
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