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「汗かいてますよおー」 そう言いながら私は 「汗なんてかいてないよ」 と言う浅井さんの額に手を伸ばす。 どこか南国を思わせる麻のような素材のシャツを着た浅井さんは、私に手なづけられるがままに、お絞りで額を拭われる。 形勢逆転したように、浅井さんが不機嫌な表情になるのが見てとれた。 「お客様の額の汗を拭って差し上げるのも、仕事の一環かなあーなんて」 そう言って私はおどけてみせたけれど、浅井さんは変わらず、ちびちびとグラスの酒を飲みながら、不機嫌な表情を変えようとしない。
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