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いや、鏡の向こうの私に笑われたのかも知れなかった。
あの不愉快な出来事を…この憂鬱さを抱えた私を、モノグラム柄のブランド物のポーチを腕からぶら下げ、洗面台を占領し化粧直しに専念し続けているキャストの女、この女も、抱えたことがあるのだろうか。
この苛立ちを…と考えるや否や、私は、
チッ。
舌打ちをし、
「売女が」
その巻き髪をアップに束ねたキャストの後ろで小さく呟いていた。
キャストの数を考えたトイレの造りにしやがれ、バカ経営者が。
キャスト全員が思っているであろう不満を、頭に過ぎらせながら、トイレを後に…
しようとした瞬間、
ガシャン!
と、ノブに手を掛けた目の前の扉に諸々の化粧品が飛散し、
私の足下には、先ほどの見覚えのあるモノグラム柄のポーチがごろりと転がった。
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