0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ルナ」
憤慨したような声でそう呼ばれて、
ああ、そうだ。
私には二種類の名前が存在するのだと今更ながらに実感した。
それはもう一人の自分として存在し、そのもう一人の自分の人格はいつも勝手気ままに一人歩きする。
だから私は自分のつけた源氏名を嫌う。
どこかで嫌って、忌み蔑んでいる。
商売女の成れの果て、とはつまり壊れることである。
崩れることである。
それはぼろぼろと、ふわふわと、柔らかく崩れる時もあれば、きりきりと執拗に胸を裂くこともある。
最初のコメントを投稿しよう!