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「ルナ」 憤慨したような声でそう呼ばれて、 ああ、そうだ。 私には二種類の名前が存在するのだと今更ながらに実感した。 それはもう一人の自分として存在し、そのもう一人の自分の人格はいつも勝手気ままに一人歩きする。 だから私は自分のつけた源氏名を嫌う。 どこかで嫌って、忌み蔑んでいる。 商売女の成れの果て、とはつまり壊れることである。 崩れることである。 それはぼろぼろと、ふわふわと、柔らかく崩れる時もあれば、きりきりと執拗に胸を裂くこともある。
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