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要はトイレで化粧品を投げ合いながら喧嘩した。 バシバシと、化粧品…いや、化粧品に限らず、気付くとポーチごと投げ合っていたし、そこらじゅうに散らばった物はトイレに置いてあったあらゆる備品だとか女の子たちの私物だったかも知れない。 デジャヴ、かも知れないと、ふと一瞬そう思った。 男の取り合いって、客の取り合いって、本当に醜い。 あの夏の日、若干の呼吸困難に耐えながら、トイレから出た。 つい先ほどまで美味しく食していたはずの無残にもグロテスクな物体に成り下がった吐瀉物を流し終え、洗面台で口をゆすいだ後、憔悴しきった顔を鏡越しに眺めていた。
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