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炎。炎、炎。家の焼ける匂い、木の焼ける匂い、家畜の焼ける匂い、人の焼ける匂い。匂いが僕の鼻孔に入ってくる。
「熱い…。」
僕は、全身にやけただれた様な感覚を持った。このまま溶けてしまいそうだ。
「カイト…。カイト…!」
僕は、姿の見当たらない友人の名前を呟いた。声になったかさえわからない。
どこかで建物の崩れる音がする。
━混濁・迷走・喪失━
誰かが歩いてくる…。
僕は、目を開けようとした。瞼が腫れ上がっているようで、うまく視界がとれない。
「生きなさい。あなたは、クリスタルに選ばれし戦士。あなたは、生きるべき人よ。」
「僕は、生きる人…。」
僕の記憶は、ここからしかない。
僕は…僕は…一体誰なんだ…。
「エース。大丈夫?」
透き通った声が聞こえる。
サラが僕の顔を見る。ピンクの髪をショートに纏めた小柄な少女だ。
腕には、13課の印である紫の腕章がある。
「大丈夫だよ。」
「本当?最近エース、そうやって突っ伏したまま動かなくなることが多いからさ…もしかして、体調悪いんじゃないかなって…。」
「寝てるだけかと思ったぜ。」
磨き上げられた日本刀を担いだ、金髪の髪をオールバックにした東洋風の顔立ちの少年が言う。
「トウヤ。僕は、こんな場所では寝ないよ。」
「そうでしょうね。なにせ、エースは床に埃が落ちているだけでも文句をいうほどの潔癖症ですもんね。」
メガネをした、委員長風の少女カレンが言い放つ。
「まあまあ、委員長も。そんな起こった口調で言うなよ。笑っていこうぜ。スマイルー!!」
お世辞でも上品な笑いとは言えない笑い方をするのは、ジャックだ。相変わらず、腰にはジャラジャラと鎖をつけている。
「もっと上品な笑いができないのか?ジャック。お前の笑いを見ているの虫酸が走る。」
「なんだよ!!人の笑い方にケチつけるんじゃねーよ!!キング!」
キングと呼ばれた、金髪を後ろに束ねた少年がどことなく銃を取り出す。
「文句あるのか?」
「隊長が来たぞーーー!!」
「はぁ…まったく、本当ナナセはタイミングよく入ってくるよな。」
「まあ、そのおかげでジャックとキングの喧嘩はこれ以上続かないんだけどな。」
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