終末

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  『外の世界』では、幾つもの時が過ぎた。  やれ戦だ、何だと騒いでいたのがつい最近のようだ……と言ったら、見た目に反する、という意味で年寄りかよ、と言われそうだ。尤も、俺ーー二藍天狐(ふたあいてんこ)はもう1000年と少しは生きているはずなので、年寄りであることに間違いはない。  しかし、俺はこの『閉じた世界』にいる者である。そのため、『外の世界』でどれだけの時が進もうとも、俺自身何も影響を受けない。  まして、俺は妖。人間のように簡単に死ぬことが出来ない。  他の妖の話によると、間もなく地球の命の灯が消えるとのこと。詳しい話は知らないが、少し前に落ちた巨大隕石『ラッキースター』が原因らしい。  科学者だとか何かが様々なプロジェクトなるものをうち出し、『最期の日』を乗り切るため、何より生き残るために取り組んでいるという話があることを、豆狸から聞いた。無駄だとわかっていても、抗う術を探すその心意気、実に人間らしい。  そんな人間を、何気に俺は好きなのだが、最近は人間の姿を見ない。
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