終末

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   地球が、日本が、間もなく闇にのまれるとなると、誰も『死んだ者に逢いたい』などと思わないわけで。20XX年になってからは、ここに足を運ぶ人間はいなかった。稀に、自ら命を絶った人間に逢いたいという妖が来るくらいである。  どうせ、皆最期の日を迎えるのだから。そしたら、逢いたい人のいる世界に行ける。 「人の世が終わる。なら、俺たちのいるこの妖の世も終わるのかな?」  1000年もの間、『死んだ者に逢いたい』という願いを叶え続けてきたが、それを願う者が誰もいなくなったら、俺もこの閉じた世界から解放されるのだろうか。  天狐が持つ力である、千里眼。それを使おうとしたが、この出来事はあまりにも多くのものが入り交じっているようだ。サトリではなくとも、情報量の多さにパンクしてしまう。そのため、俺はこの隕石落下のもたらす事象を見てはいない。  これからどうなるのか、それは俺にはわからない。ただ、願わくば閉じた世界から解放されたいと。今度こそ逢いたい人に逢いたいと。  長かったな、とぼんやり考えていたら、どうやら『外の世界』では、20XX年12月24日になったらしい。  人類の滅亡まで、あと1日。さて、記念すべき日となる今日、何か茶菓子でも作ろうか。屋敷に戻ろうと歩き始めたが、  シャラン……。 「……え?」  何か、鈴のような音が聞こえたような気がする。だが、訪問者が来れば屋敷全体に音、主として声が谺のように響く造りになっている。ならば、今の音は?  シャラン、ドンドコ……。
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