終末

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   鈴の音が聞こえてきたと思ったら、今度は太鼓の音、さらには数多の笑う声。何だかお祭りのような、そんな賑やかな雰囲気である。近くで行っているのだろうが、人間の気配は感じられない。 「天狐、上だよ、上」 「葛雪(くずゆき)、いつの間に……上 ?」  声のしたほうをむくと、顔馴染みの白蛇の妖『葛雪』がいた。人間の女性の姿に化けており、屋敷の縁側でのんびりと芋ようかんを食べていた。また勝手に食べて……という言葉をため息に変え、彼女の言うように見上げてみる。すると、そこには、派手な格好でゆっくりと空を歩く名だたる神々の姿があった。 「八百万神だよ。しかし、こりゃ凄い数だね。あたしたち妖の百鬼夜行みたい」 「さながら、八百万神夜行、といったところだな」 「確かにねぇ。でも、人が見たら、あれ、サンタクロースと間違えそう」  神社や祠など、各々がいるべき場所から離れ、何処かへと向かっているらしい。まぁ、その何処かはわからないが、八百万神夜行をしている理由は想像できる。  艶やかに、華やかに舞い踊り、人の世から離れていく。  八百万神も世界の終末に向けて動いているのだ。  椿の花が天高く舞い  神に使える鳥が歌う  風が一行を導き  月が灯り照らす  そんな美しい神々の行進と、歌声につれられてか、この世界も騒がしくなってきた。  妖の百鬼夜行である。
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