終末

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  「八百万神が動き、百鬼夜行もはじまった。妖の世が消えるのは間違いなさそうね。天狐、あんた最期の日に何かしたいとか思わないの?」  明日世界が消えてなくなるのだから、最後に何かやる、という考えは葛雪にとっては普通のことだったのだろう。茶菓子でも作ろうか、などと考えていて、いつもと変わらない1日にしようとしていた俺にとって、その言葉はあまりにも意外だった。 「特に何も? 茶菓子でも作ろうかと思っていたかな。最期の日だから好きなの作ってやるよ」 「あんたねぇ、最後の日くらいもっと何か面白いこととか……そうだ、せっかくだし『外の世界』に行ってみたら? 1件依頼受けているのよ」 『外の世界』に出てみたいという気持ちはあるが、俺はこの場所に囚われている身だ。離れられるはずがない。 「そう簡単に出れるわけないだろう。第一、ここを空けるわけにはいかない」 「あら、大丈夫よ。あんたがいない間、私がここで留守番するから。ここでやっくり茶菓子を食べながら、ね」  最期の日をここで過ごす気か、と言いたくなるところだが、あえて突っ込みをいれるのはやめよう。それよりも、自分が受けた依頼のはずなのに、何故俺に押し付けるのか? 「あーもうっ!! つべこべ言ってないで、さっさとここに、いけっ!!」  どうやら、聞こえていたらしい。ブツブツ言っていたら葛雪に何かを押し付けられ、バランスを崩した俺は、杜の外に追い出されるかたちとなってしまった。  1人残った葛雪は、苦笑いしながら呟く。 「ここまでは手伝ってあげたわ。あとは、あなた次第よ」
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