終末

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   俺が追い出された先は、人の世と妖の世の境目と呼ばれている山の入口。百鬼夜行を、やっているからなのか、近くに妖の気配はない。元の場所に戻ろうにも、葛雪が結界に近い何かをはっているのか、あるいは屋敷が葛雪に押し付けられた何かを拒絶しているのか。……いずれにせよ、俺には進むという選択肢しか残っていないらしい。 「……ったく、俺に何をしろって言うんだ、葛雪は。で、あいつから押し付けられたこれは……玉葉(ぎょくよう)?」  葛雪が押し付けてきたものは、今で言うところの手紙だった。書き手は、字面を見る限りは女性だろう。短い文章と共に、何処かの風景を描いたと思われる絵が添えてあった。町の中を歩きながら、玉葉を読み進める。真夜中とは言え、ここは人の世だ。人間に遭遇する可能性あるので、耳と尻尾を隠して歩く。人間を化かすのは趣味ではないが、今はやむを得ない。玉葉にかかれた内容を確認してみる。 『儚げに舞い落ちる六花(むつのはな) を あなたも何処かで見ているのでしょうか 幾つもの雪冠(ゆきかむり)が並ぶこの道は あなたのいる森へと続いているのでしょうか』  誰かに宛てたものか。相手は遠い場所、もしくは既に亡くなっているが、書き手は恐らく人の世にいる者。電柱と呼ばれる物に積もった雪の形、確かに木のように見えるか、と今歩いている場所の電柱を見上げながら考える。
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