終末

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   手紙を読んでいたら、挟まっていた小さな紙が、はらりと落ちた。先程の字面とは異なり、葛雪が書いたと思われる物だった。簡易的な地図のようで、目的地が丸で囲まれている。こんな場所で一体何を、という疑問を抱きつつ、歩いていけるほどの場所にあるというので、とりあえず向かうことにした。  手紙は先程の文章と、何処かの風景らしい絵が添えられているだけで他には何もなかった。行けば、わかるということか。  八百万神夜行か百鬼夜行か、どちらかとわからぬような賑やかな声が、微かに聞こえる。その声を確認することと時同じくして、空から白い六花が降ってきた。  雪に関係のある神なのだろう。八百万神夜行のなか、見事な舞いを披露しながら空を渡る白い装束を来た者がいた。手紙の文章と同じように、見上げながら思う。  書き手は、逢えない人物とせめて同じ景色を、空から舞い落ちる六花を見ていると思いたいのだろう。気のせいかもしれないが、やや水気が多いもののように感じる。 「まるで、書き手が流す涙みたいだな」  記念すべき最期の日。それぞれが、それぞれの思いを胸に今日という1日を過ごすのだろう。  涙の六花が、はらはらと舞い落ちる。 直にこの町は雪に包まれるだろう。  降りしきる六花の下、地図を片手に歩いていく。  最期の日は、まだ始まったばかり。雪はやむことをしらない。
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