犬死に

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(しまった…!!) そう思ったと同時に、隣の席にいた男が、矢を射ぬく早さで、その茶碗を受けとめた。 ワンコそばを食べに来ていた観光客から「ワンダフル」と歓声があがり、ヒトリの観光客が、隣の席にいた男に 自分の腕章を差し出した。男は、ソレを照れくさそうに受け取り、頬が赤いのは酔いのせいだと語り、ワンカップを片手にワンマンショーがはじまった。 男の周りに、人が わんさと集まり、男の語りに ゲラゲラ笑っていたが、腕章を差し出した観光客と、ワシの二人は、「コイツとは合わんな」と、そのワンマンぶりに呆れていた。 ヒトリ、その男のワンマンショーに背中を向けていたのが、先ほどまで ワンワンと泣き叫んでいた 腕力自慢の青年である。 もう、己の犬が居ぬことなど忘れてしまったかのように、ヒトリ静かに ワンタン麺を食べていた。
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