【第12話】危険な匂い1

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「じゃあ、ちょっと失礼するよ」 今にも破裂しそうな膀胱を、 それとなくなだめながら宇崎は、 空き地の隅に行き、 車に背を向けてチャックを下ろした。 その時、 一台の車が黄色いランプを点滅させながら、 遠藤の車より少し離れた所に止まった。 「ほらね、言ったとおりだ」 と遠藤が呟いたとき、 倫子の鼻を強い匂いが襲った。 それは、 倫子が分類する匂いの中でも、 最も危険な匂いだった。 「宇崎さん!戻ってきて!」 開いたままのドアから身を乗り出し、 声の限りに倫子は叫んだ。 「どうした?」 倫子の声に、 慌てて後ろを振り向いた遠藤のその視界の先では、 数人の男が車から出てくるところだった。 宇崎はチャックを閉めるのももどかしく、 車に向かって走りだしていた。 しかしすでに、 体格のいい黒いスーツの男が、 両手をひろげて宇崎を待ち構えていた。 宇崎は低く構え、 勢いをつけて男に突進したがビクともせず、 逆に宇崎が横に跳ね飛ばされてしまった。 ところが、 跳ね飛ばされた先が運良く遠藤の車の中だったので、 倫子は体で宇崎を受け止めた。 「遠藤さん、急いで!」 倫子の声に、 遠藤はアクセルを底まで踏み込み、 あたりに充満する危険な匂いを振り払って、 その場を一気に逃げ切った・・・。
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