0人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、ちょっと失礼するよ」
今にも破裂しそうな膀胱を、
それとなくなだめながら宇崎は、
空き地の隅に行き、
車に背を向けてチャックを下ろした。
その時、
一台の車が黄色いランプを点滅させながら、
遠藤の車より少し離れた所に止まった。
「ほらね、言ったとおりだ」
と遠藤が呟いたとき、
倫子の鼻を強い匂いが襲った。
それは、
倫子が分類する匂いの中でも、
最も危険な匂いだった。
「宇崎さん!戻ってきて!」
開いたままのドアから身を乗り出し、
声の限りに倫子は叫んだ。
「どうした?」
倫子の声に、
慌てて後ろを振り向いた遠藤のその視界の先では、
数人の男が車から出てくるところだった。
宇崎はチャックを閉めるのももどかしく、
車に向かって走りだしていた。
しかしすでに、
体格のいい黒いスーツの男が、
両手をひろげて宇崎を待ち構えていた。
宇崎は低く構え、
勢いをつけて男に突進したがビクともせず、
逆に宇崎が横に跳ね飛ばされてしまった。
ところが、
跳ね飛ばされた先が運良く遠藤の車の中だったので、
倫子は体で宇崎を受け止めた。
「遠藤さん、急いで!」
倫子の声に、
遠藤はアクセルを底まで踏み込み、
あたりに充満する危険な匂いを振り払って、
その場を一気に逃げ切った・・・。
最初のコメントを投稿しよう!